すでに水曜日に行われ開票済みだったオランダの結果は、ヨーロッパ全体の政治の風向きをよく象徴しているものだったようだった。
以下、今回の選挙結果の注目点だ。
1.どの国でも軒並み労働党をはじめとする、クラシックな社会主義政党が大きく敗退した。
2.いずれの国でも、(時として保守傾向が表に出てくる)キリスト教民主主義、(市場原理派の)自由主義政党が躍進した。
3.グリーン勢力が拡大された。
4.ヨーロッパ懐疑派の、無所属議席や独立議席が前回に比べるとかなり増えた。
一般に今回の選挙では、親ヨーロッパ連合派と反ヨーロッパ連合(国粋主義派)の分極が目立っていた。いずれかに黒白の決着を求めるような投票行動が目立った。
その一方で、フランスのサルコジ、イタリアのベルロスコーになど、保守からリベラルが優勢となった。これはある意味では、経済不況期には典型的な政治行動といえるかもしれない。福祉を拡大し大きな政府を求める社会主義派にとって、今の経済環境はあまり望ましい状態ではないからだ。
しかし、全体として、今回の選挙の投票率は、43%にとどまり、前回をさらに下回っている。1989年以来、ずっと投票率は下降の一途をたどってきた。
ヨーロッパ議会、EUに対する関心の低さは、今回また顕著となった。そんな中で、国粋主義派らが、無所属とはいえ、各国で票を伸ばしているのは、あまり気持ちの良い傾向とはいえない。
第2次世界大戦直後の、ヨーロッパの政治エリートらの理想主義は、そろそろ薄れ去ってきているのかもしれない。
しかし、その一方で、国際協調は不可欠の世界情勢になってきていることも事実だ。保守系・自由主義者の先導するヨーロッパは、今後どういう動向をたどるのか、目を離せない。