2008年12月6日土曜日

こんなに違うオランダ(人)とフランス(人)1

 普段はオランダに住んでいますが、1年のうちに5回ほどフランスに行きます。行先は、過疎の田舎、パリからさらに500キロほど南下したドルドーニュという川の川沿いの村です。もともと、海外を放浪してきた私たち夫婦は、夫婦いずれかの国に永住しなければならない、という気はあまりなく、できれば、好きな場所にゆっくり居を構えて老後を、と思ってきたのです。そういう何年か先のことを見据えながら、たまたま見つけたフランスの過疎の村に、古い古い農家を買ったのは、今からもうかれこれ15年以上も前のことになります。休みごとに出かけて行って、いずれ落ち着く日までの準備を、という気分でもあります。そういうわけで、フランスの田舎に定期的に行く生活が続き、そうするうちに、ご近所の農家の人たちとも親しくなり、その地方の習慣にも慣れてきました。
 
 それにしても、オランダとフランス。国土の大きさもさることながら、人々の暮らし向きも、人間関係も、社会意識のようなものも、事あるごとに両国の間には違いを感じます。

 すぐに目につくのは、オランダは国土が狭いために、農業地帯といってもすぐそばに何らかの地方都市があり人口密度も圧倒的に高いのに対して、国土の広いフランス、しかも、農業大国のフランスは、都市と田舎の違いがとても目立っています。

 オランダの自宅から、そのフランスの村に出かけていくのに、高速道路をおよそ1000キロほど走るのですが、パリに近づいてくると、道路が渋滞していないかがまず気になります。果たして、パリ周辺をどううまく渋滞に合わずに短時間で通過できるかは、毎回チャレンジ課題なのです。込んで来そうになったらナビと地図を駆使して何とかわき道を、と試みますが、なかなかうまくいきません。

 というのも、フランスという国は、実に一局集中型の国で、首都パリは、日本の東京と同じように、国内のすべての道路がそこに向かって走ってくるように作られているからです。地図を広げてみればわかりますが、パリ周辺は、二重三重に環状道路が取り巻いており、それ以外は、すべてが、都心に向かっていく星状の道路づくりになっています。まったく、なぜ、こんな効率の悪いつくりにしているのだろう、と腹が立ってきます。パリ市内にある凱旋門も同じで、都内の道路がこれまた凱旋門に向かって走っています。だから、いったん、市街地に近づいたが最後、あちらもこちらも渋滞で身動きが取れない、というようなことが日常茶飯事なのです。

 オランダの道路は、こういうフランスの事情とはまるで違います。
 そもそも、オランダには、一局集中型の都市というのがありません。いくつかの都市が役割分担をしている、という感じです。
 もともと、歴史的には、アムステルダムが商業の中心地として昔から栄えたために、正式には「首都」とされていますが、この年には政庁は置かれていません。政府は、アムステルダムからだと鉄道で約一時間かかる、首都ではないハーグ市にあります。そのほか、大きな都市には、ハーグからさらに南西に下った所にあるロッテルダム市があります。こちらは、ヨーロッパ一の港湾都市で、ヨーロッパだけではなく、それ以外の世界の各地方から来る船舶を迎え、オランダだけではなく、背後にあるヨーロッパ諸国へのフォワーディング業で栄えている町です。
 そしてもう一つオランダの4大都市に加えられるのはユトレヒトです。オランダの国土のほぼ中央に位置し、アムステルダムからもハーグからも1時間以内で行ける場所にあります。ユトレヒトはその立地条件のために、全国から学生が集まる最も大きな大学を持っています。若い人が多い町です。それもあってか、研究所や非政府組織などの本部が集中しています。

 このように、オランダの都市は、フランスのパリのように一極集中型ではなく、全国の道路地図を見ても、道路が集中した場所はなく、全国に網の目のように張り巡らされているという感じです。

 実を言うと、この道路づくりに関する両国の違いは、両国の人々の社会意識の違いにも大変よく連動しているように思います。

 カトリック教国のフランスは、カトリック教会型、と言いますか、社会が何事もピラミッド型でできている。学校制度を始め、様々の社会制度が、大変中央集権的であることが、ヨーロッパの中でも特に目立っているといえます。それに対して、道路がネットワークのようにまんべんなく広がっているオランダは、人々のメンタリティもフラット。何か、社会に山や谷のような凹凸がないというか、平等感がやけに強い国です。カトリック教徒もいるがプロテスタントの信徒もいる、また宗教を抜け出た自由主義者、ヒューマニズムの伝統も強い。それらが、マイノリティとして、お互いに、上下の関係を作らずに、平等にお互いを認め合っているのがオランダなのです。

 フランスの中央集権的な政治や制度は日本に似ていなくもないな、と思います。
 けれども、そうかといって、フランス人も日本人のように従順でおとなしいのかというとそんなことはない。この国は、さすがに、フランス革命を起こした国だけあって、市民意識は大変高い国。人々の社会参加意識、議論の文化は、さすがに、ヨーロッパの先進国、という感じがします。

 それはともかく、国土の規模が大きくなると、このように中央集権で統治する以外にないのかな、と気づいたのは、オランダが比較の相手であったからです。フラットとはいえ、オランダはやはり規模が小さな国。実際、どんなに宗教や倫理感が違っているといっても、オランダの人たちのものの考え方は、フランスや日本のように大きな国の中の多様性ほどに大きな違いはありません。
 しかし、フランスはといえば、かつては、言語も二分されていた国。地方ごとに特産物が異なるし、独特の地方文化を持っています。中央集権性の国といえば、一見「画一的」に見えるけれども、実は著しいほどに大きな多様性を内に含んでいて、それがために、中央でしっかりみかじめをつけていなければならなかったのだな、と気付かされたのは、こういうフランスとオランダの違い、そこに見られるパラドックスに気付いたからです。 日本もまた、全国津々浦々、地方文化が豊かな国です。違いがあるからこそ、「まとめる」とか「統合する」といった意識が生まれ、中央集権が求められるのかもしれません。

 などと考えていると、おっとそれでは、もっと大きなドイツはどうなる??
 ドイツは州ごとの地方分権性が伝統的に大変強い国です。

 それはさておき、オランダ(人)とフランス(人)の違いは、まだまだいろいろとあります。それについては、また、これから折々。